「THE BANDED かつて僕らが大好きだったもの」という、アランスミシーバンドのギターボーカルのヒデさんと、OHIO101(オハイオワンオーワン)のギターボーカルの鈴木純也さんとの二人でやってるユニット及び企画のライブの様子を書き残します。
行けなかった方や、後ろ髪引かれる思いでライブ途中に帰られた方などへも、少しでもバンドやイベントの魅力が伝わればと思います。
「THE BANDED かつて僕らが大好きだったもの」vol.11@中崎町 epice cafe 2024.09.13(fri)op18:00/st19:00
※前回のvol.10のようすはこちらのリンクからご覧いただけます。
→「THE BANDED かつて僕らが大好きだったもの」Vol.10
※お二人それぞれのバンドです。クリックすると公式webへジャンプします。
The Alan Smithy Band
オープン時間の18時ちょうどに「おまたせしました」とのアナウンスで店内に入る。
内装は壁にギターやレコードが飾られ訪れた演者のサインがしてあったりと、いつまでも居座りたい雰囲気がある。
左手側がキッチン、キッチンを囲むように逆L字のカウンターとスツールが数脚置かれている。
入ってほんとすぐ右側が演奏ステージになっていて、その奥の一段高くなったテーブル席に体を向けて歌うようになっている。
なに食べようか。
冷やしオムライスが気になっていたが売り切れていたのでグリーンカレーを注文する。しばらくしてから昼食にもカレーを食べていたことに気づく。
-第1部-
開始予定時刻の19時00分となる。
玄関外のテラスに座ってはったヒデさんがよいしょと立ち上がる。
少し重たい硝子の扉を押し開け店内へ入る。ライブ前の緊張感を漂わせ、入ってすぐ左手側の自身の荷物からクリームの Tシャツを右手でつかみ上げ、店内奥へ向かう。
彼を知ったのは今年からだけど、おそらくTシャツ好きなんやろうと感じる。
着替えに向かった茶畑には先客がいて鍵が閉まっていた。
お色直しを終え、アコースティックギターを左肩から掛けチューニング。マイクスタンドの高さを変えるためにピックを口にくわえ、支点のレバーを回す。しかし回らない。
「ッ……きつく締めすぎた」
19時を5分程回ったころに咳をひとつ払う。
「みなさんこんばんは」
アランスミシーバンドからはヒデさんのソロがはじまる。
導入曲は「Collegetown Bagels」。ミニアルバム『Grayout』に収録。
出だし数秒ほどで空気が変わる。彼のうしろの硝子扉の隙間から見える通行人や車の往来が、歌詞とリンクしているかのように感じ、まるでカレッジタウンベーグルに座っているかのように思える。
もし人生で実在するカレッジタウンベーグルへ行くことがあったなら、アランスミシーバンドの「Collegetown Bagels」のステッカーを持って行って、出来れば流暢な英語で「日本のバンドがあなたたちのお店を舞台に曲を書いたんですよ」って言うてステッカーを渡して、濃いめのホットコーヒーと一緒にベーグルを食べたい。
いつも自分自身のことを考えさせられる「スノーマン」。
ライブで聴くたび響く。そして家に帰って歌詞を見て歌詞の意味をじっと考える、毎回そのパターン。
「寄せ書きの要領で 余白を埋めてい」くってのは、ほんとに元気付けられる。余白にコーヒーをこぼしてしまっても、汗が飛び散っても、疲れ果てて顔面から寝落ちしてよだれや脂が付着したっていいやんか。体調のこともあって言い訳や妥協の毎日でしんどいけど、きっと笑えると思う。
2曲続けで演り終え、ありがとうございますと感謝を述べられて、汗をかいた左の手のひらをジーンズの側面でぬぐう。
「今日が11回目なんです」
10回は無事に終えることが出来て11回目を迎えることが出来た。
この11回目を次の10回への第一歩として重要で、大切にして挑むと「20回目も見えてくる」
それを聞き、20回目に足を運んでいる私が想像が出来た。
続けることから派生して、いろんなバンドがあれやこれやと企画する、自主企画イベントの話になる。
アランスミシーバンドは自主企画イベントが定着しないとのこと。
「何回かやってはまた別のイベントをやって」の繰り返しで10回も続いたことはないそう。
なるほど、今年初めからやっているイベントの「Two Circles」も4回で終わっちゃいますし。
あとに出てくるOHIO101のギターボーカル鈴木純也氏のイベントは100回以上超えているものもあるようで、
「ほんまかなー、途中はしょってはるんちゃうか」
と冗談をこぼし「異常」という名の賞賛も忘れない。
昔の企画をもう一度復活させてもいいのかもしれない。新旧ファンが喜びそう。私は今年に入ってアランスミシーバンドを知ったから、これまでの23年間を知りたいし、昔のイベントを復活させたら記憶の紐が何か面白い発想の糸口になるかもしれませんし。知らんけど。
チューニング、そして2回目のお話。
アランスミシーバンドの24周年を記念するイベントを1年かけてやっていること、第2回目にOHIO101が出演したこと、12月に周年を締めくくる第4回目が開催されることをおっしゃる。
その周年イベントの3回目までの様子は下記のリンクからどうぞ。
第1回目:三日月ジョン×アランスミシーバンド
第2回目:OHIO101 × アランスミシーバンド
当然ですけど各回それぞれ共演者が違うので、まったく違う化学反応が起こっていますね。
振り返るとそれぞれまったく違ったハイライトがあり興味深くて面白い。
12月6日にやる第4回目は、「サンタラ」というデュオを迎えるのこと。先月の第3回目のパドルズは先生と生徒の学業繋がりで、次回は大学の先輩後輩つながり。
「ワルツが好きなのかな」「景色が見えやすい」「最近すごい評判がいい」と言われているらしい「The Driving Waltz」。その勢いで何かのドラマの挿入歌になってもいいと思う。
爽やかな夜風でカーテンが揺れるように体を左右に動かすヒデさん。アコースティックギターとボーカルだけで夏の名残りを感じさせるように歌い上げる。
いつまでも暑いですよねというお話から、先日飼い犬を連れてキャンプへ行った時のお話へ。
テント張ってキャンプしに行ったけど暑くて暑くて寝れなくて、それでも我慢して寝てたら耳元で「ハッハッハッハッハッハッ」と何かを訴えるような浅くて早い呼吸が聞こえてくる。
「もうかわいそうになってテントの外へ出た」
出たはいいけどものの数分で蚊の大群に襲われた。
極め付けに「焚き火をしていて」と。
「ずっと家にあった薪を使ってしまいたかったから」ということで結構な量の薪をじゃんじゃん放り込んでいって、夏の暑さに拍車をかけていたようです。
焚き火を見つめるヒデさんは何を思っていたのでしょうか。
そのあと「ちょっと涼しくなったから寝れた」とキャンプの話を締めくくるが、「涼しくなって寝れた」って言うてたのは、焚き火が熱すぎた反動なだけで、涼しくなったわけではないのではないのかと思ってしまう。
次にやる「甘い言葉」という曲は、バンドのベース担当のヒゲさんがアランスミシーの曲で一番好きな曲だそう。フルーツの食感が無理で食べられない彼。その話をした前回Vol.10ではお客さんの中に同じようにフルーツが嫌いな人もいらっしゃったというお話。
ヒゲさんの話をしながらチラッと右を向くんですね。私たちからしたら左側、いつもバンドでヒゲさんがベースを弾いているほう。ソロでもメンバーを感じながら演奏しているのかなってバンドの絆を感じた瞬間だった。
そしてそのヒゲさんのおかげで「甘い言葉」がより好きになったとのこと。バンドではまだ聴いたことがない。そのうち期待しても良いのかもしれない。
さて。
もし、近い将来バンド演奏で「甘い言葉」を聴けたとする。
この曲の前後のMCで「甘い言葉」をバンド演奏するになった経緯の話のする、そのとき起こりうるかもしれない一つのパラレルワールドをここに記す。
ヒデさん「ソロではたまにやってたんですけど、バンドでは何年振りかなってくらい久々です。この曲は、前のベースの杉やんがまぁ家庭の事情で辞めることになって、15年ほど前かな、ヒゲちゃんが加入したんです。その時にヒゲちゃんにアランスミシーの曲で何が好き?って聞いたんですよ、そしたら意外やこの曲が一番好きって言ってたんです。で、今回この曲を演ると決めてから、昔こういうことあったよなってヒゲちゃんに話したんですよ。そしたら彼、なんて言ったと思います?「俺そんなこと言った覚えはない」ですよ。散々いままでこの曲はヒゲちゃんが一番好きな曲ってソロのライブで言ってたのに」
ヒゲさん「そうやな。うん、記憶にないわ。それ俺ちゃうんちゃう?」
閑話休題。
最後の曲のその前に、11月に毎年OHIO101とやってる2マンライブ『INTO THE HARVEST』の告知。この時は、毎年お題を決めてそのお題にそった曲を創り合って披露しているとのこと。これだけでも観に行くべきですよね。
今年のお題は「天敵」だそう。
自分自身の天敵はなにか、と考えながら11月に彼らはどう天敵を昇華してくるのかを待ってみようと思う。
最後は「蛍」、問答無用の名曲。「みんなに愛されている」(ヒデさん談)という曲で締めくくる。聴くときによって捉え方やニュアンスや情景が変わる曲でもあると感じている。
だからこそ今をなるべく後悔のないように生きようと、私はいつも思う。
-setlist-
01.Collegetown Bagels
02.スノーマン
-mc-
03.Looking At You
-mc-
04.The Driving Waltz
-mc-
05.甘い言葉
-mc-
06.蛍
ヒデさんのパートが終わり、お花を摘みに立ち上がった先にヒデさんがいてはり、少しお話をする。
そのTシャツ良いですねとお褒めいただいたので
「これKula Shakerです」と鼻息荒く伝える。
「クーラシェイカー !むかし「Sound of Drums」を出囃子にしてましたよ」
なんというマル秘エピソード。嬉しい。
どんな曲かはこちらからご確認ください→「Sound of Drums」
-第2部-
第2部は、OHIO101のギターボーカル、鈴木純也氏のソロです。
何度も繰り返し使用して四隅がちぎれて紙質がふにゃふにゃになっているA4用紙の歌詞の束、ドクターマーチンのショートブーツ、黒で統一した衣装で登場の鈴木純也さん。黒の中に際立つのが、紅一点のような存在のトマトが入ったステージドリンクのお酒。
はじまりますという言葉は特になく、アコースティックギターを静かに鳴らしはじめることが合図。曲はたぶん「三叉路」という名前の曲。
曲調はダークでセピア色、1950〜60年代(昭和25年〜)ごろの日本のようなイメージ。たばこ屋の小さな窓口には公衆電話が置かれ、前の路は舗装されておらず風が吹いたら砂埃が舞い、夕暮れ時には消えかけの街灯しかなく通行人もまばらで神隠しにあいそうな、勝手な三叉路を想像している。
譜面台に置いている歌詞は歌い終わると足元へ落とし、お話の時間へ。
「そんなに特別かな」とヒデさんとは一転して、11回目の開催はひとつの通過点として考えているよう。
「先週もここでライブして」と話題が変わる。
(注:以下、鈴木さんがお話しされた内容と結末はそのままで、ドアスコープを覗くときなどの細かい描写は私が勝手に想像してます)
先週大阪へ来た時、「東横インの◯◯店に泊まった」のだそう。
ライブのあと午前2時ごろまでepice cafeで飲んで、その後ホテルへ帰ってベッドに横になったそう。そうしたら、
「すり足の音が聞こえてきてね」
会場内のすべての動きが止まったかのように静まり返り、呼吸するのを忘れて鈴木氏の次の言葉を待つ。
「地面をズッ…ズッ…と擦って歩く音が聞こえてきて、それがどんどん大きくなっていって、去っていく」
胸の前で腕を組みながら、それが繰り返されるんだよねと、ぽつり、ぽつりと語る。
廊下に変な人がいるのかなと気になり、布団で衣擦れする音もなるべく立てないように静かにベッドから降りて、足を忍ばしてドアまで行き、そっとドアスコープに近づく。
片目をゆっくり閉じてドアスコープを覗こうとした瞬間、ズッ…ズッ…と絨毯を擦る重い音を無防備になった背中に感じる。
ハッと振り返るともちろん誰もいない。
頭を傾(かし)げながら、部屋の間取りはベッドと備え付けのテーブルの他に、あとはバスルームしかないと、浴室への扉に手をかけ、ゆっくりと開ける。
ユニットバスの洋式トイレは蓋をして眠っている。その横の洗面台の蛇口はしっかり閉じていて水が滴っていることもない。浴室の白濁色したシャワーカーテンの向こう側、誰も隠れている気配はない。
一通り確認していると、今度は、部屋の中から重怠い足を引きずるような音が聞こえてくる。ズッ…ズッ…と、途切れ途切れに。
振り返るもやはり誰もいない。
浴室からベッドのある部屋まで戻ると、あの音は風呂場から聞こえてくる、風呂場を覗きにいくと今度は部屋の中から聞こえてくる。
どうやらベッドから風呂場までの、ちょうど中間あたりから音が聞こえてくるようで、鉄筋を伝って上や下の階からの足音が響いているのでもなさそう。
「まぁそのときはそのまま寝てね」
寝たんかい!と会場から多数の心の声。
ホッと弛緩した空気に
「でも…」
「でも、その部屋に忘れ物をしてしまって」
電池カバーのような小さなものを部屋に忘れてきたようで。
ホテルのフロントへ電話するも「そのような忘れ物はありませんでした」の一点張り。
そんなはずはないと食い下がるも発言は覆らず。
「じゃあ同じ部屋お願いします」
本日の宿泊先は、先日部屋の中から足音が聞こえてきた部屋だそうです。
思考が追いつかずポカンとした客席をよそに何食わぬ顔で「カントリーロード」へ。この曲はカントリーロードのメロディーに鈴木氏が作詞した歌詞で歌い上げている一曲。「世が明ける前の静けさ」という歌詞があり、先ほどの話と繋がってるのかと考えてしまう。
……あれ?
目が霞んでいるのか、ついさっきから鈴木さんの後ろに白いモヤが見え隠れしているような。周りを見渡してみても、誰も何も感じず演奏に聴き入ってるようなので私の勘違いか。演奏中の鈴木さんが動くたびにそのモヤも動いてるように見えるのですが。
-第3部-
このままやろうかと、ヒデさんを迎えふたりになる。
本日のメインイベントのTHE BANDED。The Bandの魅力を広めるという使命を帯びている。
「飲み物大丈夫ですか?」とヒデさんが気づかう。
曲順が決まっていないようで(リハーサルした)順にやりましょうか、というようなラフに選曲していくスタイルに落ち着く。
1曲目はそういうスタイルだったかもしれないけど、進んでいくうちに「これやろっか」「あ、こっちがいいな」と聞こえてきたのでその限りではないと思う。
1曲目は「It Makes No Difference」を。アコースティックギターのヒデさんが歌い、エレキギターに持ち替えた鈴木さんがコーラスを担当する。
この曲、The Bandオリジナルでは、焚き火の後ろでメンバー5人が座ったりポーズをキメたりしているジャケットのやつに収録されています。焚き火…
私はThe Bandに関してはBob Dylanのバックで演奏していた程度の知識で、7月にやったTHE BANDEDで聴いてみようとなりました。
まだファーストアルバムしか聴いていませんが。
おすすめは『軌跡』というタイトルのベストアルバムのようです。
2回目あたりのMCで鈴木さんが
「爪を切り過ぎてしまって」と深爪してしまったことを告白。
ギタリストなので爪の手入れは欠かせない、でも爪切りを忘れてきてしまったようで本編始まる前に「爪切りないですか?」と尋ねたよう。
あったけれど借りた爪切りでは、切りにくいですよね。それですごい深爪になってしまったようで今日は深爪に悩まされているようです。
爪に硬化剤を塗布したみたいですけど、それも取れてきてしまったようで。身を、いや爪を削っての振り絞った演奏ですね。
The Bandの話になり、鈴木さんはセカンドアルバムが「一番好き」とのこと。
その一番好きなアルバムに入っている鈴木さん曰く「カバーしてもパッとしない曲」、ヒデさんは「パッとしないけど何か残る」らしい曲を演奏される。
以降の演目としては、鈴木さんがThe Beatlesで一番好きな「Happiness Is A Warm Gun」や、万年筆のラミー社に依頼されてデモ音源を作ったが結局話が流れてしまったのを再構築したものを演奏したり、この日初めて披露される新(カバー)曲は歌詞を飛ばしながらも無事にやりきられる。
「本物の方がいいよね」と鈴木さんが言ってはったけど、THE BANDEDからThe Bandを知った人からしたらTHE BANDEDの方がよりリアルに思えるのかなって感じる。
The Bandが良いことはもちろんやけど、THE BANDEDが今、わたしたちの目の前で演奏してくれているのが、たとえカバーであってもリアルに感じられるのではないかと。街中でThe Bandが流れたら思い出すのは今日の光景だったりする。
私にとってのビートルズの「Rain」がそうであるように、今日足を運んできてくれているお客さんの中には、「The Weight」の曲はオリジナルのThe BandでもThe Smithがカバーしたものでもなく、THE BANDEDが歌ったものがリアル、そういうことがあって良いと思う。
本編最後は二人の共作らしい、アランスミシーバンドのアルバム『The Sound of Your Voice』収録の「Run on the Highway」で終幕です。
拍手が鳴り止むなんてことはなく、すかさずアンコールへ。
まだあの曲やってないなという目測は当たり、アンコールは「The Weight」。
映画「イージーライダー」で使用された曲。私はまだ映画を観ていない。
鈴木氏「イージーライダーみんな見てるでしょ?」
うーん、と首を捻る客席。
鈴木氏「ここにおる人みんな70年代生まれでしょ?」
シーン…
気を取り直して、ファーストアルバム収録の「The Weight」を演奏して第11回目は無事に終了となる。
この曲で「客席と一体になって歌いたい」と前回仰っていたので次回はもっと聴き込んでから行こうと思う。
※セットリストは後日ヒデさんが教えてくれるということで白紙のままにしておきます。
-setlist-
01.It Makes No Difference
02.
03.
04.
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en.The Weight
ご覧いただきありがとうございました。
このあとの東横インの宿泊はどうなったのでしょうね。
私も気になり色々調べてみましたが、その話は鈴木さんの後日談と同じタイミングで書こうかと思います。
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