2023年12月20日水曜日

【前編】Droopys -レコ発&マルヒロ脱退企画-『FUNGUS』@寝屋川VINTAGE 2023.12.17(sun)


校正するまでラストライブと書いたつもりがライスライブとなっていた。
来年の豊穣を願って。
Droopysベーシスト、マルヒロさんのお米ライブ兼デジタルシングルのリリースイベントです。

そういう彼の、Droopysとしての恐らく最期の一日の一端が、少しでも伝わればと思います。

長すぎるので前後編に分けます。
後編からでも良いんですがまずは前編です。



Droopys pre. 
『FUNGUS』
2023.12.17(sun)
@寝屋川VINTAGE
op17:30/st18:00
出演)



※バンド名をクリックするとそれぞれの公式web等へマルヒロします。





カレーの食べられる処がないか探しつつ、初めての寝屋川VINTAGEをスマホの地図を見ながら向かう。行き先は商店街を指していたので、”昔ながら”という枕詞がピッタリの商店街へ入る。
入り口すぐの天井からジャラジャラジャラ、ジャラジャラジャラ、ときどきカランカランとガラガラ抽選会で聞かれる音が断続的に聞こえてくる。録音?
腕まくりして挑む高揚感と年の瀬の活気を結びつけて、購買意欲へつなげる作戦か。
奥へ進むと100円ショップという看板の”100円”の部分を、”108円”にした108円ショップもあり、寝屋川おもしろい。


ホンマにここ曲がるん?という商店街から伸びた細い曲がり角を右へ。町内の掲示板と床屋の間の路地を抜けた先に目当ての場所を見つける。
建物は4階建てくらいの水色を基調とした、名の通りヴィンテージ感を出している外観。この建物だけがアメリカからタイムスリップしてきたように思える。加えて裏のアパートに住んだら毎日通えるなというのが私の感じた第一印象。
1984年創業ということは、あといくつ寝ると40周年。

私と反対側へ歩いていくのは髪の毛のサラサラ感からthe seadaysのクボさんのよう。彼も夕食を摂れるところを探しに行ったのかと思う。

入り口に視点を戻すと、喫煙所で身を縮こませながら幾人が煙草をくゆらせている。
LODYPOPSのツバサさんが中から出て来たので近寄って挨拶。
煙草に火をつける彼は、襟付きのシャツに、デニム地の薄手の羽織りを引っ掛けただけの春の装い。

「寒いですね」
「とにかく寒い」
「前、締めなくていいんですか?」
「……寒い!」

じゃあ前締めたらいいじゃないですかと喉元まで出かかったのを飲み込み、彼と目を合わす。
焦点、合ってる。ほっぺ、赤くない。
酒はまだ入っていないよう。

そのすぐあとに、ぴよんさんが笑顔で手を振ってこちらへやって来る。
彼らは一番手なのでリハーサルもこれから。


ツバサさんと一旦別れ、商店街を散策。
1,000円のお買い物で1枚の抽選券がもらえると、商店街の天井から吊り下げられた、クリスマスを連想する色の大判広告にそう書いてある。そして今日が抽選最終日とのこと。
目を凝らすと、マルヒロさんありがとう!大感謝セールの文字と、その横に目を細めて笑った彼の顔写真が載っている。
抽選会場も見つけ、そっと中を覗くと年配の女性二人がサンタの衣装を着て無表情に立っていた。


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餃子の王将の天津チャーハンで腹を満たし、17時10分すぎに寝屋川VINTAGEへ戻ってくる。
the seadaysの渡辺さんが煙草を吸いながら「(寝屋川vintageの)存在は知っていたけど」「寝屋川降りたの初めて」とメンバーに話している(渡辺さんのワタナベが数あるワタナベのうちのどのワタナベなのか判らないので、“渡辺”で統一させていただく)。彼らは京都出身。

「3階でも(煙草)吸えるみたいですよ、でも登んなきゃ」みたいなことを渡辺さんが、出てきたAmsterdamnedのタキグチさんと話をし、背中を丸めて中へ消える。

両手を突っ込み寒さに耐えているとマルヒロさんの声がフェードインし、誰かと出てくる。あえて気づいてないように壁を向く。
「ホンマは土曜にやりたかってけど手違いがあって今日になった」や終演後の打ち上げの話や、「俺んちこっから〇〇(交通手段)で〇〇分やねん」というようなことを私が聞いているとも知らずに……。



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LODYPOPS



幾度の修羅場をくぐり抜けてきたようなカラフルなペロペロキャンディと、LODYPOPSの文字のすぐ下にこう描かれている。


「さよなら、請け負います」

脱退やら解散の現場に立ち会うことが多い今年のLODYPOPS。
本日は一番手。
スーパーカーの「Sunday people」が流れる。

ステージ向かって左の扉から出てくるのかと思ったら右側のらせん階段から降りてくる。
飾りじゃなかったん。
DNAの二重らせん構造のようならせん階段。
青いツバサさん、赤いぴょんさん、サポートのしんのすけさんという順にぐるぐる下降してくる。暗闇の中の彼らはさしずめ床屋の回転灯を連想する。ツバサさん静脈、ぴょんさん動脈、白の包帯はドラムが抜けたあとのサポートメンバーを意味する。


今日も靴下は赤色のツバサさんが、しんのすけさん、ぴょんさんの順に頷きあい、SEがフェードアウトする。
少し震えるような声でひと言、

「寝屋川の、素敵なさんにんぐみに捧げます」

「ever」のイントロを爪弾く右手も口元と同じく小刻みに震えている。私の目頭も反応する。
「Droopysと付き合いが長い」とぴょんさんが言っていたので、私よりも思い出す景色は比にならないくらい、いくらでも出てくると思う。
だから感動を打ち鳴らすツバサさんの演奏が少しトチったって仕方ないし、感情が溢れてしまっただけなのだからまったく問題ない。


ギターの弦を「LODY」のイントロで切る。
切れたまま演りきる。気合の入り方が違うので、今日の場合は"斬る”が正しいのかもしれない。
音の変化を察しツバサさんを見るぴょんさんがニヤリ。

3曲目へ行こうとしたしんのすけさんを待って待って待ってってというようにやっと制し
「ギターの弦がきれました」
指差すぴょんさん。
心の底からツバサさんのアクシデントを楽しんでる悪い笑顔。

the seadaysのギターボーカルの渡辺さんがギターを貸してくれました。いつものギターよりも小ぶりなものなので、ツバサさんが一回り大きくなったよう。


-mc-
ひと通りチューニング等を済ませ、
ツバサさん「大阪の素敵なさんにんぐみLODYPOPSです、一発目から弦きっちゃいました」と挨拶。
彼のMCでは「202X年◯月△日」と必ず今日の年月日を言う。
言い間違えたり飛んだりする日がいつか来るかもしれないと期待で胸を膨らませている。
特に新年。
2024年なのに2023年と言ってしまう。言った本人は前髪をかき分けるだけで、隣のぴょんさんは気づいて笑う。でも決してツッコまない。


どの曲か忘れたけど、曲の最後の最後で「ベン」と一音だけベースを響かせ終わるのがめちゃくちゃカッコよかった。


「またライブハウスで逢いましょう」
ライブハウスじゃなかったら何処で逢えるかな?
たまに夢に出てくるけどね。まさに「ファンタジア」。

「ファンタジア」で見送ろうと決めたのは(もちろん推測ですが)、マルヒロさんが抜けてもDroopysは続いていくから「ひとりじゃないよ」って言ってくれてるし、マルヒロさん側からしてもバンドを去っても「バンド辞めてもひとりじゃないし、いつでも待ってるからね」って肩を叩くためにこの曲を、最後に選んだんだと思うような、気がする。


-setlist-
SE.Sunday people(by スーパーカー)
01.ever
02.LODY
-mc-
04.オレンジブルー
05.polar
-mc-
07.ファンタジア




ichiru



寝屋川VINTAGEのステージの高さは、成人男性の胸の下あたりまであり、かなり高めな部類に入る。真正面を向くと目の高さが演者の膝あたりになるので、自然とバンドを見上げることになる。

さて。
いちる、と読む。
由来は"一縷の望み"のいちるでいいのかな。
ichiruのみ初めまして。
しかし、紅一点のベーシストさんの左利きのベースプレイを見たことあるようだったので、あとで調べるとアンロックローバーというバンドに在籍していた方でした。彼女は去年に一度観たことがあった。

メンバーは
ギターボーカル:ヒカルさん
ベースボーカル:よーはさん
ギター:かずやさん
ドラム:勇佑さん
の4人組。

4人とも黒を基調とした上衣。
靴はみなバラバラ。よーはさんコンバース、かずやさんVANSのスリッポン、ヒカルさん「es」と描かれたスニーカー、勇佑さんは裸足。

ヒカルさんは髭と揉みあげが繋がっている。
唇下から顎先までの髭は、ルビンの壺のような形状に整えられている。
ルビンの髭。
何が見える?
また、彼の履いているデニムの両膝はパックリと破れて小僧が見えている。
外はさぞ寒かったでしょうに。


SEなしで本編が始まり、1曲目からみんなで拳を上げるような曲でスタート。
「あしたの朝は君がいないから」と歌っていた。
マルヒロ「あした?あしたは仕事。でもリモートやねんへっへっへ」と開演前そう話しているのを盗み聞きしたので自宅にいると思う。
済みません、歌詞の世界観を壊してしまって。

ヒカルさんが曲の間奏部分で「良かったら一緒に皆さん歌ってください」と言っている、その彼の膝に私は集中していた。
ライブ始まってすぐの段階で、私の真正面に見える両膝のデニムの破れが2つの口に見えていた。
2つの口がヒカルさんの声に合わせて一緒に歌ってますねん。
右のトーマスが下唇を突き出して歌うと、左のデービスは上唇を器用に動かして大きな口を開ける。「俺らにもマルヒロを送らせてくれよ」


2曲目は、ベースの音とドラムの音が交互に鳴らして自然な繋がりで心地よく聴けてカッコいいなと感じる。二人の阿吽の掛け合いが見どころだと思う。

この曲あたりでLODYPOPSのツバサさんが、私の左横にそっと来る。酒を片手に。
ichiruのライブが終わって「カッコ良かったですね」と彼に振るも、小声過ぎて聞き取れず聞き直してしまう。それよりも私は、現時点で彼の酒缶がいくつ目なのかが気になっていたので彼の返事は覚えていない。


「マルヒロバンド辞めるってよ」とMCが始まる。
寝屋川に縁もゆかりも無いバンドを、マルヒロさんが各地で出会ったので連れてきたというようなことを仰っている。
同じ寝屋川VINTAGEで、同じ時間くらいに、同じベーシストの、SHIZUKUというバンドのどすこいさんの脱退を見送ったとも。
ここにもサヨナラ請け負い人がいた。
「いつでも帰ってきてください。……しんみりしてるな」
「今日レコ発やから」と客席にいるDroopysのにっとくん。
忘れてた。

「レコ発おめでとうございます、卒業おめでとうございます」とおっしゃり、次は「風は吹く」という曲。ライブの翌日にSpotifyで見つけたので曲名が判る。
このイントロから、こんなギターの音に繋げるんやと新鮮な始まり方で展開もエモーショナルで聴き入る。
向かい風だったのがやがて追い風になるような曲、そうトーマスとデービスも言っている。



the seadays



今日もライブ直前にセットリストを決めたのかな。
「久々にリハーサルした」とギターボーカルの渡辺さんが仰っていたのをたまたま盗み聞きしていたので、今回のセットリストはあらかじめ決められていたのかもしれない。マルヒロさんの花道ですもん。

ステージ上のクボさんのセットリストを(「pulse」を演るか演らないか確認するために)覗き込むと、はなむけに相応しいような曲が並んでいた。判らんけど。

靴下にズボンの裾の一部をインしている渡辺さん。トレードマークはthe seadaysのロゴが入ったオレンジ色のバンドT。

演奏開始前に中央に集まって、四人グーを突き合わせる。その行為が、上っ面だけのパフォーマンスじゃないと、判り感じ取れるのが彼ら。the seadaysの魅力が出ているところだし、好きなところでもある。
3番手、the seadays。ライブ、スタート。

色んなことがあっても私たちの人生は素晴らしいよ、という「再生」を1曲目に持ってくる。
泥くさい、という表現は当てはまらないが、地道にバンドのキャリアを積んできた彼らなので説得力は充分過ぎるほどある。
ギターの出口さんの機材トラブルがあったけどほどなく解消。


「jersey girl」のときは特にリズムに合わせて口をパクッ、パクパクとさせるドラムのナラサキさん。口を開けたタイミングでスプーンですくったアイスクリームを口に入れてみたい。
目の表情を見てても七変化するので楽しい。
つけると宣言した家計簿はまだ続いているのか。

そんなことを考えながらも「カッコいいとしか言えんよな」と思ってる。嘘じゃない。


めちゃくちゃ寒い日なのに「冷たい」という曲をする。余計なお世話ですね。ナラサキさんのドラムの破壊力や踊るように弾くクボさんの姿も楽しめる。


MC。
以下すべて渡辺さんのお言葉。
「初めて寝屋川に来ました、京都……、のバンドseadaysです」と渡辺さんの挨拶。
言いたかったのは「京都から来ました」だと思うけど、さっき寝屋川に来ましたって言ってしまったしどう繋げよう、という間だったと思う。

「えー、どるーぴー……、どぅるーぴーず」
「レコ発というのを失念してて……」
大丈夫、にっとくんと太一さん以外みんな忘れてる。全部マルヒロがさらっていった。

「これから会えなく……」
せっかく良いこと言ってる最中なのに、ナラサキさんにドドン、ドンドン、ジャンジャンと邪魔される。

どんな道を選んでも良いようになれば良いなという曲をマルヒロさんへ手向け、ライブが終了。

ギターを降ろした渡辺さん、社会の窓が開きかけていたがまだまだ大丈夫なラインだったので私は胸をなで下ろす。



-setlist-
01.再生
02.ストーリー
03.jersey girl
04.冷たい
05.シトラス
-mc-
06.nonsense is good



Amsterdamned



ついでに観に来たわけではない。
あむすてるだむど。

今日は、サポートキーボードの松川さんがいないので3人での演奏。3人でのライブは初めて観るかもしれない。
松川さんが普段いるステージ中央付近は、そのままポッカリ空いたままで、もう少し中央に寄ったらいいのにと思うくらい、不自然ギリギリにタキグチさんとたみおさんが離れている。


ギターボーカル:タキグチさん
ベース:たみおさん
ドラム:ちからさん


準備終わらせたタキグチさんはらせん階段を昇り、頭から消える。
足から生えてきて、手には黄緑色のい・ろ・は・すを持って戻る。


たみおさんのベースの位置が限りなく上だったので、アゴで弾くのかと思ってしまう。社会科の先生みたいなスタイルなので弾けそうな気もする。


Amsterdamnedのライブでまず思い出されるのは、客席からの野次ということに皆、異論はないと思う。
今日は主にベースのたみおさん側でワンワン飛んでいた。


1曲目が「carnival」から始まるとは。
この曲に出てくる百鬼夜行は水木しげる画のイメージやけど、今日は妖怪の顔がすべてマルヒロさんにすり替わっていた。
マルヒロさん全員集合。
彼の顔写真をハサミで切り抜き貼り付けて作ったカクカクしてるアニメーションみたいに、鼻息荒く動く。
ミラーボールも夏のマーメイドもマルヒロさん。
ほら……ね?


MC。
喋りはタキグチさんで、新曲デシダルリリースのこと、マルヒロさんの脱退やそういう話が最近多いことを話される。
らせん階段上部では太一さんとマルヒロさんが座って下界を見渡している。

「俺らも年喰ったな」だけでタキグチさんは片付けはせず、
「バンド離れても音楽を好きでいてほしい」
「また釣り行きましょう」
彼だけにではなく、今まで土俵を去っていった仲間たちに向けた言葉だと感じた。

「その日の天使」を演らなかったのは個人的に淋しかったけど、演奏しなくても今日の天使は誰なのか決まってますからね。


-setlist-
01.carnival
02.さよならbody
03.点と線
-mc-
05.??(なんの曲か判りませんでした)
06.smells like SEA BREEZE



つづく



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